医学部合格の王道の一つ

偏差値65以上、センター試験得点率90%以上ーー。医学部合格のハードルは決して低くありません。合格に向けて何をどう準備すればよいのか、小学生の保護者の方に相談される機会も増えてきました。

驚いたのが、中高一貫校を提案してみると、「考えてみたこともなかった・・・」という方が思った以上に多いことです。しかし、特に大都市圏では、中高一貫校に入学し、高校受験に時間を取られることなく、大学受験に向けた準備をすることが、医学部現役合格への一つの王道となっています。高2までに高3までの内容を先取りし、高3の期間を問題演習に充てるというのが一般的なペースです。

こういった情報に触れ、実際に学校説明会に参加することで、中高一貫校に志望を変更される方も少なくありません。そこで、新たに「中高一貫校という選択」の連載を始めることにしました。静岡県内の中高一貫校にスポットを当て、一貫校ならではの取り組みを紹介していくことで、中学校進学の際の選択肢を増やしていただければと思います。

第1回は医学部をはじめとした難関大学を目指す「エグゼコース」を設けている、静岡サレジオの末吉弘治学校長にお話を伺いました。

企画/構成/取材:三山 真太郎(教育情報センター)

第1回
静岡サレジオ小学校・中学校・高等学校
末吉 弘治 学校長

静岡サレジオの特徴とは

やはり、一貫教育が最大の特徴ではないでしょうか。中高なら6年間、小中高であれば12年間、それだけの時間をかけて育てていくということになれば、焦らずに、大切なことをきちんと積み重ねていくことができます。私の世代は小さい頃に陣地取りという遊びをしていましたが、小さな枠組みを少しずつ大きくして、最終的に大きな陣地を取ることができます。最初から大きな陣地を狙うと、結局のところ何も手に入りません。教育でもそんなイメージを持っています。

また、本校では、小中高の12年間を4年ごとに区切った4・4・4制(プライマリー・ミドル・カレッジステージ)という枠組みを作りました。第2ステージであるミドルステージまでにものの見方、考え方を完成させるという仕組みです。第3ステージであるカレッジステージは、一般的な中学3年生から高校3年生に当たりますが、そこで希望に応じたコースを選択することになります。

だからこそ、先行してミドルステージまででIB(国際バカロレア)を導入するということでしょうか

そうですね。現在は候補校認定の段階ですが、導入することで教科横断的に考えられるようになってほしいと考えています。語学に関しても、今は英語の4技能と言われていますが、小学校、中学校の段階で英語の活用能力をぐんと伸ばして、その後にリーディング、ライティング能力を身に付けて、初めて4技能がバランス良くなるのではないでしょうか。全体でバランス良くするためには、最初に突出させる部分は必要です。それを高校の3年間だけでバランスを取るというのは、難しいのではないかと正直思っています。英語も言葉ですから、習得段階というものがあります。4技能を均等に勉強すればいいというものではありません。

学校長就任から10年。IBもそうですが、2011年に上智大学と教育提携を、2016年に東京都市大学と高大連携協定を締結するなど、さまざまな改革を進めています

いわゆる詰め込み型の教育に対する問題意識が大前提としてあります。本当の学力を育てていくために、大学との連携を進めてきました。「この生徒はこういう活動をし、こういうことを理解し、こういう能力があって、これだけのスキル(スコア)も持っている」といった情報を伝えることで、その大学で活躍できる生徒を送り出していくというのが教育提携の仕組みなんです。

2018年はその上智大学に23人を送り出しました。反響はどうでしたか

教育提携を始めとする改革の方向性を打ち出したのは7年前です。当初はなかなか周囲の理解を得られなかったのですが、実績が出ると、やはりいろいろな反響を頂くことができました。ありがたかったのが、私たちが展開している方法論というものが、やっと世の中に理解され始めたことです。2020年の大学入試改革や、大学でのアクティブラーニングを中心とする授業や入試制度の改革、そういったことを見据えて静岡サレジオは改革を勧めてきたんだということを評価してもらえるようになりました。

大切なのは、ポートフォリオを中心とした活動記録に加えて、学力スコアも入っているという点です。今までは学力を抜きにした、評定平均中心の推薦試験がほとんどでした。客観的なスコアを提示した上で、それをクリアしていなければ推薦でも入学できないというのは、当たり前の話です。大学に入って学ぶ準備ができているかどうか、その姿勢があるかどうかが大事だと思います。私たちが7年前から始めたことが、ようやくスタンダードになってきたかなと感じています。

東京都市大学とはどういった経緯で連携協定を結んだのでしょうか

三木千壽学長と教育プランの方向性が一緒だったことが最大の理由です。ご縁があって本校までお越しいただいたのですが、お話を伺い、静岡サレジオが小中高で実践している教育が、大学で更に広げていってもらえると思ったんです。私たちは高校の出口で生徒を大学とつなぐことをやっていますが、東京都市大学では、大学、あるいは大学院の出口で企業とつなげているんです。学生がどういう人材で、どういうことをやりたいと考えているのかという情報を、就職先とつなげるということを展開されていて、就職率も約99%と非常に高い。高校から大学へ、そして企業へと、生徒を円滑に接続することを目的にした高大連携協定なんです。

協定を結んだことにより、東京都市大学の先生方が出張講座で来てくださっているのですが、「この先生の元で建築を学びたい」ということで、他大学には目もくれずに目指す生徒が出てきます。ですから、本校から東京都市大学に行く生徒たちは、志が高いですよ。

改革を進める中で、小中の連携にも変化があったとか

教育体制も含めて私たちの取り組みに興味関心を持ってくれる生徒や保護者が増えてきています。その結果、小学校から中学校への内部進学率は75%〜80%に上がりました。もともとは30%だったので、これは劇的なことです。本校の挑戦というか、取り組みが、徐々に受け入れられつつあるのかなと実感しています。

カレッジステージ(中3〜高3)は医学部を始めとした難関大学を目指すエグゼ、教育提携を結んだ上智大学を目指すソフィア、そしてフロンティアという3コース制をとっています。それぞれ、どのような生徒が多いのでしょうか

高校からの入学者も含めて、穏やかですが、目的意識がはっきりしているというタイプが多いです。そもそも、目的意識を持っていなければ、コース制の私学を選ばないので、環境というか校風みたいなものですかね。

例えば、エグゼであれば、医学部専門予備校である工藤塾と提携しており、医師になりたい、難関大学に行って工学を学びたいなど、意思が明確です。ソフィアは、上智大学に行って国際的な視野を広げたいと考えている生徒ばかりです。フロンティアは多様なイベントと推薦枠があるため、いろいろなことがやりたい生徒、いろいろ経験して進路を決めたいという生徒が多いですね。推薦は120大学240人もの枠があり、いろいろな進路を選ぶことができます。難関大学も多いですよ。枠が多いのは、南山大学15人、関西学院大学11人、法政大学6人といったところでしょうか。様々な目標の実現を支えるために、あるいは目標を見つけるために、3コース制をとっているんです。

そういった意味では、気質は似ていても、いろいろな生徒がいますよ。世界で活躍するサッカーの審判員を目指している生徒、高校生平和大使に選ばれており将来は国連職員を目指している生徒、「高校生の手話によるスピーチコンテスト」で全国2位になった生徒、クラブユースに所属してプロサッカー選手を目指している生徒、目指す未来は多様です。志を持っているということは、やはり強いことですよね。志があるからこそ、今何を頑張るのかを考えられます。ですから、勉強も目的意識を持って頑張ってもらいたいですし、私たちも自分の将来の夢に向かって頑張る生徒たちをしっかりと支えていきたいです。

コース選択の際に、迷う生徒も出てきそうです

中学から入学する生徒たちは、入学時から将来の選択を意識している場合が多いですね。エグゼから医学部に行きたい、ソフィアから上智に行きたい、フロンティアから美術大学に行きたい、そんな目標を1年生のうちから持っています。

そして、コース分けの前の中学2年生のときには、全生徒と校長面接を実施しています。生徒本人と保護者の方、そして私と担任というメンバーです。そのときに、自分はどうしていきたいのかをプレゼンしてもらいます。もちろん、その時に自分の人生が決まるわけではありません。プレゼンした通りにならなくてもいいんです。でも、1度真剣に将来を考えてみて、自分で意思表示をするということがとっても重要なことなんです。中学2年生の今の時点で自分はどう考えたのか、それが、カレッジコースに進む面接試験みたいなものです。

生徒たちはすごく緊張して来ますよ。泣き出す生徒もいるほどです。自分でそこまで突き詰めて考える経験がないから、決めきれない生徒もいます。それはそれでいいんです。今決めた通りにになるわけじゃありませんから。でも、考えないと。そうしないと、目的もなく大学に行くことになってしまいます。

参考:静岡サレジオHP