静岡から医師を目指す小学生、幼稚園生の保護者に、中高一貫校という選択肢を検討してほしいとの思いから始まった「中高一貫校という選択」。連載第2回は創立50周年を迎え、ドラスティックな変革に挑んでいる静岡聖光学院の星野明宏常務理事・副校長にお話を伺いました。

第2回
静岡聖光学院中学校・高等学校
星野 明宏 常務理事・副校長

静岡聖光学院の特徴とは

本校は、伝統的に医師や経営者のご子息が多く入学している学校です。そういった方々の「公のために、他者のために自分の力を生かせるリーダーを育成してほしい」というニーズの受け皿となり得る学校が、本校が誕生した50年前にはありませんでした。ですから、「Man for Others(誰かのために)」「紳士(ジェントルマン)を育てる」というビジョンを掲げたカトリックのミッションスクール、しかも中高一貫の男子校で、寮もあるという学校は、当時は異質な存在だった思います。校長先生はカナダ人の方でしたし、ある意味、黒船のような存在でした。

ただし、これは乗り込んだのではなく、県知事をはじめ静岡の政財界が誘致活動をした結果なんです。ですから、世界で活躍する人材や、志の高い医師、静岡のマーケットを進化させることのできる経営者を輩出できるだけのマインドを、この中高の6年間で育むのが私たちの創立から変わらない使命です。そのために誕生した学校ですから。

創立50周年を機に教育改革を進めていますが、具体的な内容を教えてください

今までは、教科書の内容を頭に叩き込んで、それをテストで再現することが求められていました。しかし、これからは、自分の考えを求められることが増えてきます。「あなただったらどうしますか」と問われ続けるということです。ですから、新しい価値を創り出したり、答えのない問いに対して、自分の考えを作っていく力が必須となります。キーワードは「創造力」です。

本校は創立当初より、知識のみに偏った人間を育てるのではなく、幅広い教養を身に付けたジェントルマンを育てるべく、リベラルアーツを重視したアカデミックな教育を続けてきました。これを一歩進め、これからの時代を創造するための環境づくりとして、PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング=課題解決型学習)を実践するための教室であるCreative_lab(クリエイティブ・ラボ)や、自分を表現し他者との分かち合いを図る場であるピエールロバートホール(PRH)を新たに設けました。PRHは、TEDを彷彿(ほうふつ)とさせる作りで、プレゼンテーション能力を高めるには最適な教室です。部活の研究発表や、授業などで活用しています。

職員室や教室も全面ガラス張りにして、廊下からでも中が見える環境を整えました。教室を使って学び合いをしている様子を他の生徒が見て、興味を持って参加してみるという良いサイクルが生まれています。

更に、図書室も、教員が知的好奇心を刺激するような本を選んで展示し、知的探検にいざなうように表紙を見せて展示する、開放感がありコーヒーを飲める、といったスペースにデザインし直すことで、常に生徒たちが集まる場になりました。改めて環境の大切さを実感しています。

そして、これからの生徒たちに必要な教育を、一歩先を見通して提供すべく、静岡県内で唯一、21世紀型教育機構に加盟しました。志を同じくする先取の精神あふれる県外私立各校の教員たちと、互いに切磋琢磨しており、我々自身も新たな学びの連続です。生徒たちに考えてもらうにはどうすれば良いのか、日々の研修や議論で追求し続けています。

男子校である強みはなんでしょうか?

私自身、男子校(桐蔭学園)出身なので、その良さを実感しています。男子校だから伸び伸びとできる、失敗を許容できる風土がある、自己肯定感を育みやすい、良いところはいくらでも挙げることができます。体力をつけたい生徒はラグビー部に入るし、ミニ四駆が好きな生徒は部活で改造に熱中しているし、サメが好きな生徒は解体までやっています。むしろ、男子校でなければできないことも多いのではないでしょうか。

ただ、ここが伝わりづらくてもどかしいところなのですが、自分で経験していないことは想像しにくいですよね。特にお母様は男子校を経験したくても経験できません。そこで、どんな学校なのかを知ってもらう機会を積極的に設けています。たとえば、10月には「逃走中season4」というイベントを実施し、小学生200人が参加してくれました。この12月からはクリスマスイルミネーションのイベントを開催するなど、地域に積極的に開放しています。

まずは学校に足を運んでいただき、「私立中高一貫校だから関係ない」「男子校だから志望しない」ではなく、自分の子どもの成長にはどういった環境が良いのか、という視点で学校を検討してもらえたらと願っています。私たちも、選ばれる学校でいられるよう努力を続けていきます。

生徒寮に入ることもできますが、良さはどんなところにあるのでしょうか

自分の家では、自分たちのルール、価値観で生活できます。それが寮では、同学年に30人生徒がいたら、30種類のルール・価値観がぶつかり合ったり、融合したりします。その経験を通して、人を許す気持ちだとか、他者理解が自然と広まります。それこそ、お風呂の入り方一つとっても違いますし、掃除のやり方、人との接し方も違うわけですから、そういった意味では、最高の教育の場だと思っています。寮生活をしたことがある保護者の方は、良さを知っているので、息子を寮に入れたいと希望される方が多いですね。

将来、世界で活躍したい人には、特にお勧めですよ。世界に行けば、人種も文化もまったく異なる人同士が、お互いどこでどのように折り合いをつけるのか、議論していくことが重要になりますから、寮での経験がきっと役立ちます。

基本的に中学からのみ生徒を受け入れています

本校の生徒には、単に偏差値の高い大学に進学する、大会社に就職する、医師になるというのをゴールにするのではなく、なんのためにそうしたいのかを考えられるようになってほしいんです。たとえば、本校では、毎年1割近くの生徒が医学部を志望します。医師になりたいという目標は良いのですが、もし何かしらの理由で断念せざるを得なくなったとき、それで人生が終わってしまうわけではありません。なぜ医師になりたいと考えたのか、そこを生き方にまで落とし込むことが大切です。本校はミッションスクールなので、Man for Others、つまり自分が持っている培ってきた能力を「誰かのために」使える男を目指してほしい。その意識を思春期も含めた中高の6年間で育んでいきたいと思っています。

そのため、中2〜高2で4つのプログラムを実施しています。中2の「職業体験プログラム」で企業や社会人と関わり、中3の「学問研究プログラム」で大学の講義を経験し、高1の「個人研究プログラム」では自分のテーマを原稿用紙30枚以上の論文にまとめることで何を学びたいかを考え、高2の「学部学科研究プログラム」で自分のやりたいことを学ぶために最適な大学はどこかを調べていきます。この4つのプログラムは創立間もなくから始まりましたが、「どう生きていきたいか」を考えるために逆算して設計されているんです。

更に、学外体験もどんどん増やしています。2019年の春休みには、中1の希望者がシリコンバレーとサンフランシスコに研修に行くことになりました。また、サッカーの清水エスパルスや、バスケットボールのヴェルテックスとも、多様な個性の子どもたちが共同してパソコンでいろいろなものを創造する、ITプログラミングキャンプの合同企画を実施しましたし、 英国のイートン校、ハロー校、米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)といったエリート校や、アジアのいわゆるトップ校とも提携しています。これは、従来の語学留学とは全く異なり、多国籍の子どもたちによる課題解決のための学びや共同作業、異文化交流を目的として行っています。

12月にはインドのモダンスクールに22カ国から生徒が集まって、一つのテーマをもとに意見交換を行う国際サミットが行われるのですが、本校は日本代表として、今年初めて参加します。生徒が何かに興味をもったときに経験できる、あるいは何かに興味を持てるようなきっかけづくりを、今後も拡充していきたいと考えています。

※参考:静岡聖光学院HP