奨学金を知る

日本の人口1,000人当たりの臨床医数は、OECD(経済協力開発機構)加盟国の単純平均3.2人に対して2.3人と、医師不足の状態にあると言われています。その上、大都市圏に数が集中しているため、地域医療の崩壊を指摘する声も少なくありません。

そこで、2016年に東北医科薬科大学、2017年に国際医療福祉大学に医学部の新設を認めるなど、国を挙げて医師不足の解消を図っています。特に地域医療に従事する医師が不足しているため、各自治体でも奨学金制度を設け、支援を行うようになりました。

私立の医学部は6年間の学費が約1,800万〜4,600万円と高額です。しかも、医学部は入学後も勉強が忙しく、6年間勉強に集中できる経済的環境があるかどうかは、医師になる上で大切な要素の一つであると言えます。各自治体の奨学金制度は、こうした医師になる上での経済的ハードルを下げる役割を果たしています。

私立大学医学部 学費ランキング

  6年間の費用 初年度費用 2〜6年次平均 大学
1 18,500,000 4,500,000 2,800,000 国際医療福祉
2 20,800,000 2,900,000 3,580,000 順天堂
3 21,000,000 2,900,000 3,620,000 関西医科
4 22,000,000 4,500,000 3,500,000 日本医科
5 22,419,600 3,903,350 3,703,250 慶應義塾
6 22,500,000 3,500,000 3,800,000 東京慈恵会医科
7 23,000,000 5,000,000 3,600,000 自治医科※
8 25,800,000 4,800,000 4,200,000 東邦
9 27,000,000 4,500,000 4,500,000 昭和
10 28,410,000 5,985,000 4,485,000 大阪医科薬科
11 29,400,000 4,800,000 4,920,000 東京医科
12 29,800,000 6,300,000 4,700,000 藤田医科
13 30,490,000 5,915,000 4,915,000 産業医科※
14 33,200,000 6,350,000 5,350,000 日本
15 34,000,000 6,500,000 5,500,000 東北医科薬科
15 34,000,000 9,000,000 5,000,000 岩手医科
17 34,200,000 8,200,000 5,200,000 愛知医科
18 34,820,000 6,970,000 5,570,000 聖マリアンナ医科
19 35,000,000 6,400,000 5,720,000 東海
20 35,800,000 6,800,000 5,800,000 近畿
21 36,200,000 9,200,000 5,400,000 久留米
22 36,600,000 8,600,000 5,600,000 獨協医科
23 37,000,000 9,500,000 5,500,000 杏林
23 37,000,000 8,500,000 5,700,000 兵庫医科
25 37,400,000 8,250,000 5,750,000 埼玉医科
26 37,600,000 8,600,000 5,800,000 福岡
27 38,800,000 9,362,000 5,887,600 帝京
28 38,900,000 9,000,000 5,980,000 北里
29 39,500,000 11,000,000 5,700,000 金沢医科
30 45,500,000 10,500,000 7,000,000 川崎医科
31 46,065,000 11,300,000 6,953,000 東京女子医科

※ランキングは、6年間の学費が少ない順に掲載しています
※自治医科大学、産業医科大学は学費を貸与(詳しくはPDF参照)
※内容は変更される可能性があるため、必ず各大学の募集要項等でご確認ください
私立医学部学費PDF

例えば、奨学金の貸与枠を年120人分設けている「静岡県医学修学研修資金」では、貸与額が6年間で1,440万円。静岡県出身者だけでなく、全国から応募を受け付けており、どの大学の医学部に進学しても申請可能です。しかも、「卒業後、静岡県が個別に指定する医療機関で、医師として9年間勤務」すれば、返還が免除となります。

また、御前崎市でも月額25万円を貸与する独自の奨学金制度を設けています。こちらは、市立御前崎総合病院への勤務を条件に奨学金の返還が免除されます。
参考:市立御前崎総合病院の奨学金制度

「医学部はお金がかかる」というイメージが(事実とはいえ)強過ぎるため、各自治体の支援制度は、まだまだ知られているとは言えません。つまり、最初から経済的な理由で医学部受験を避けてしまうことが多いのです。もし、あなたが、あるいはお子様が、医師という職業に興味を持っているのであれば、経済的負担を減らせる制度があるということを、ぜひ知っておいてください。

ただし、注意点もあります。返還免除条件のある自治体の奨学金は、将来的に地域の医師不足を解消するために、その担い手を育てようと手厚い支援を行っています。そのため、返還免除の条件を満たさなかった場合は、1カ月以内に全額を返還しなければいけないなど、厳しい規定があります。貸与を受けるには書類審査や面接があるため、将来的にどんな医師として活躍したいのか、具体的なイメージを持った上で申請するようにしましょう。

参考:無料で通える医学部